DIVE!! [本(児童書)]
森 絵都さんの『DIVE!!』
飛び込み競技にかける少年達の物語。
知季、飛沫、要一。
性格、個性、体格、才能など、まったく違う3人の少年。
3人はそれぞれ挫折しながら成長し、自分の武器を生かした飛び込みへとのめり込んでいく。
この3人がメインだけど、その周囲のコーチ、友達、恋人、家族などもけっしてただの脇役
ではない。
特に最後の四部では、オリンピック代表権をかけた試合のドキドキ感がメインの3人の視点
からだけではなく、周囲の人達の視点も加わり、さらにハラハラドキドキ感は高まる。
誰が代表権を得るのか…。
飛び込みバカな少年達がいい。
お互いの才能を脅威に感じながらも、ライバル達の飛び込みへの姿勢が自分をやる気にさせる。
10代の不安定さと純粋さが気持ちいい。
飛び込みなんて知らないから…って思っていても読みはじめれば、1.4秒の競技が魅力的に描かれ
ていて一気に入り込める。
ちょっと実際の競技も見てみたくなってしまった。
そういえば私は、短い時間で決まるスポーツ観戦はけっこう好きだ。
飽きないってのもあるけど、なんとなく凝縮してる感じなのがいい。
10mのコンクリートドラゴン…たぶんそこから水中へダイブするなんて、私には一生ないだろう。
でもちょっとそこから下を見てみたい気も。
きっと足がすくんで、血の気が引いちゃうんだろうけどねー。
星兎 [本(児童書)]
寮 美千子さんの『星兎』
少年ユーリと等身大のうさぎの物語。
この地上に来る前はどこにいたのか、そしてなんでこの姿なのか、わからないと言ううさぎ。
そしてうさぎが『星うさぎ』なのだと思い出した時、このままでいられないことを悟ってしまう。
児童書というよりも、大人の癒し本といえるかも。
特別変わった難しい単語を並べているわけではないのに、美しく澄んだ文章。
その澄んだ空気間が、よりせつなさを際立たせる。
誰もが皆、地上にいつ来て、いつ去らねばならないのかわからない。
来る前にはどこにいたのか、去ったらどこにいくのか…
自分が自分だけのものだとしても、自分では決められないことがある。
そして去っていく者を見送るのは、とてもせつない。
なんの変哲もない王冠が宝物になるように、いくつかの小さな思い出を抱えて空を見上げる。
ぎゅうっと抱きしめる時間をもらえてよかったとうさぎは言う。
もしも私も去らなければならない時が来たなら、大切な人をぎゅうってして去りたい。
そんな時間がもらえるといいな。
はてしない物語 [本(児童書)]
ミヒャエル・エンデさんの『はてしない物語』
バスチアンは本屋で一冊の本と出会う。
夢中で読み始めた物語。
読み進めていくうちに自分のことを呼んでいることに気付いた少年は、その呼びかけに
こたえて物語の中へ。
物語の中で自分を見失っていくバスチアン。そんなバスチアンを心配しながら冒険を共に
するアトレーユ。
様々な経験を通して真の自分、真の望みをみつけていく少年の物語。
情景のすばらしさにうっとり。
特に「夜の森ペレリン」が私はお気に入り。
美しいものも醜いものも描写のすばらしさで、バスチアンだけでなく読み手も物語の中へ
引き込まれていく。
アトレーユやバスチアンが様々な冒険をしながら進んで行くように、読むのも一歩一歩
進んでいく感じだけど、一気に読まずにはいられないような…。
私は今、大人になってから読んだけど、子供のうちに一度読んでみたかった気がする。
そして大人になってまた読む。
なんとなく映画の少しうすっぺらなイメージがあって読まなかったのだけど、原作の本
の方は濃くズッシリとしている。
高学年ぐらいの子の読み物かなぁ。小さい子には難しい言葉も出てくるし、量もあるので。
本の中に入って冒険する。
そんなことになったらオモシロそうだなぁ…。ちょっと怖いけど!
ふたりはなかよし [本(児童書)]
『ゲーターガールズ ふたりはなかよし』
ジョアンナ・コールさん,ステファニー・カルメンソンさん作
エミーとアリーはとっても仲良し。
夏休みの一日目、計画リストにはやることが7つもあるので、二人はけっこう忙しい。
そんなエミーとアリーが夏の間別々になってしまうことになって…
とってもテンポのいい話。
リン・マンシンガーさんの絵が楽しい。この絵のおかげでよけいテンポアップ。
ちょっとテンポが良すぎて?すぐに読み終えてしまうので、本を読み慣れた子には
ものたりないかもしれないけど、でも楽しい気分になれる本。
読んだら、ワニ作ってみたくなった。
エミーとアリーが仲良く歩く姿はちょっとおしゃまでかわいいし、なんだかんだと
二人にちょっかいを出すマービンもかわいい。
どこでなにをしても、エミーとアリーは二人でいられれば楽しいんだろうなぁー。
いいね、そういうの。
ドルオーテ [本(児童書)]
斉藤 洋さんの『ドルオーテ はつかねずみは異星人』
毎日ベランダにねっころがり、双眼鏡で夜空を見ながら宇宙飛行士ごっこ
をしている達郎。
ある夜、達郎の目の前に突然やってきたUFO。
壊れてしまったUFOに乗っていたのは『ドルオーテ』と名乗る異星人。
ドルオーテは「はつかねずみ」を一匹用意してほしいと達郎に頼む。
異星人ははつかねずみ姿だし、ゆうれいがこわかったり、心配したり、怒ったり…
でもちょっと頼りにもなるドルオーテ。
達郎の両親はおおきな子供みたいな感じなので、達郎にとってはいい兄貴分っぽい。
SFっていう感じよりも、ドルオーテと達郎の友情ものがたりで楽しい。
達郎の夏休みの出来事なので、夏休みの宿題やきもだめしなどがでてくる。
小学校中学年あたりの男の子にいいかもしれない。
以前、山の中でバイトしてた時に、たまに星空を見ていた。
降ってきそうな星空に口がポカンと開いたまま見上げていた。
なんとなく久しぶりに星空が見たくなった。
プラネタリウムにでも行こうかな。
ドルオーテって名前、なんかいいな。かっこいい。
しかもはつかねずみ姿って…そんな異星人なら出会ってみたい。
ちなみに宇宙人というのは古いのだそうだ。地球人も宇宙にいるんだから宇宙人の一種。
…まぁ、そりゃそうだ。
タイムマシン [本(児童書)]
アニリール・セルカンさんの『タイムマシン』
厳粛な寄宿学校を退学となった13人の少年達。
世界中にバラバラになった彼らは、ケンの『タイムマシンを作ろう』
という呼びかけで、ドイツのケンの家へと集まってくる。
少年の夢物語と、はじめは向き合おうとしない大人達。
でも真剣な彼らに、だんだん動かされていく。
筆者はドイツ生まれ、トルコ国籍の工学博士。
トルコ人として初の宇宙飛行士候補に選ばれる。そんな筆者の実体験を元に書かれた本。
何がスゴイって、これが実話を元にしているということだ。
少年達のまっすぐなパワーがいい。
タイムマシンという少年的な発想のものを、様々な角度から考え調べ計算し、ちゃんと
現実的に考えていく。
実際、専門的なことが出てくると私にはちょっとわからなかったけど(科学苦手だったし…)
あとがきで筆者が『信頼や愛情に垣根はない』と書いている。
ほんとにそのとおり。少年達はそんな垣根はかるーく超えてしまった。
イアニスのおばあちゃんの言葉がすてき。
『誰かになってほしいあなた』ではなくて『自分のなりたいあなた』になって帰ってきなさい。
ただ、話が前後したりするので全体をつかみづらいし読みづらい。
そこでちょっと挫折しそうな気もするが、厚い本ではないので読み返して把握するといいかも。
だれも知らない小さな国 [本(児童書)]
佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』
コロボックル物語シリーズの1冊目。
ある小山で子供の頃に見た小人の姿が忘れられず、大人になった青年がその小山に
帰ってくる。
その青年と小人達 は友達となり、『やじるしの先っぽのコロボックル小国』ができる。
青年(せいたかさん)とおちび先生を味方にしたコロボックル達は、それ以後少しづつ
人間との関わりを広げていく。
私が児童文学好きになったきっかけは、この本だった。
読み終わった後は、ホントにコロボックルっているんじゃないかって思っちゃった。
せいたかさんがうらやましい。
ひみつの小山に、自分だけの小屋。そこに小人達だなんてもう夢のようだ。
このシリーズで1番好きなのは、2冊目の『豆つぶほどの小さないぬ』。
ほとんどが、コロボックルとそれに関わることになった人間との話が多いのだけど
この2冊目はコロボックルが中心。
もちろん、せいたかさんやおちび先生も出てくるけどね。
死に絶えたと思われていたマメイヌを探し、つかまえてそれを1番最初の新聞記事に
しようと奮闘するコロボックル通信社の仲間達の話。
なんていうか…とってもいきいきしているんだよなぁ。
マメイヌをつかまえるための仕掛けに「おお!?」っと感心したり…
3冊目からはコロボックルの世界も近代化してきて、人力タケコプターみたいな
空飛ぶ機械やコロボックル式ラジオ(トランシーバー)などが出てきます。
せいたかさんの時代はたぶん私の親世代ぐらいだから、今の子供達にしてみれば
おじいちゃんおばあちゃんの若い頃の時代となるのかな。
ラジオを手作りしていたり、時代を感じることもあるけど、物語に古さは感じない。
村上勉さんのイラストも素敵。
ぜひ読んでもらいたい一冊です。
小人の本をもっと読んでみたければ、わたりむつこさんの『ははなはみんみ物語』
メアリー・ノートンさんの『床下の小人たち』などもまた違った小人の世界を読むことが
できていいかもしれません。
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『佐藤さとる コロボックル物語展ーだれも知らない小さな国ー』
2007年8月4日(土)〜9月30日(日)
県立神奈川近代文学館 展示館 第3展示室
http://www.kanabun.or.jp
って展示がこの夏あるらしいですよ〜。どんな展示になるんでしょうね?
エルマーのぼうけん [本(児童書)]
ルース・スタイルス・ガネットさんの『エルマーのぼうけん』
エルマーは年とったねこから、野蛮な動物達に捕らえられ働かされている
かわいそうな子供のりゅうの話を聞く。
どうぶつ島へりゅうを助けるためにエルマーは冒険の旅へ。
本を開くとすぐに現れる地図にワクワク。読みながら、エルマーのいる場所がわかる。
エルマーは身近なものを使い、知恵と勇気で猛獣達の間をくぐり抜けていく。
怖いはずの猛獣達だけど、とってもかわいい。
三つ編みをして喜んでいるライオンなんてもう〜♪
『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』と3冊。
『エルマーとりゅう』は助け出したりゅうがエルマーを家まで送り届ける道中の話。
『エルマーと16ぴきのりゅう』はりゅうの家族の危機を知ったエルマーが助けに行く話。
色がついているのは表紙と地図だけだけど、とってもカラフルなお話。
だいぶ昔に出た本なのに、古さはまったく感じない。
挿し絵がかわいくて多めなので、とってもわかりやすい。
絵本から読み物へと移行するのにちょうど良さそうに思う。
低学年の子だったら自分で読めるだろう。
りゅうの家族、全部に会えたら楽しいだろうなぁ。
だって、横縞、縦縞、水玉、きいろ、みどり、そらいろ…だって!フフフ。
あるきだした小さな木 [本(児童書)]
テルマ=ボルクマンさんの『あるきだした小さな木』
ちびっこ木は森で男の子を見てから、パパ木とママ木のそばを離れて
歩きだす決心をする。
人間につかっまったり切られたりしないようにしながら、歩いて自分の場所を
探して旅をするお話。
シルビー=セリグさんの絵がとっても素敵。
歩いている木の絵も、顔はないのに楽しそうに見えて好き。
昔からある本だけど、小さい頃は本が好きではなかったので、この本との出会いは
2年前にある古本屋で。
絵が気に入って、ほしい!って思ったけど、その時お金をまったく持っていなかった
ので、買えず…
最近になってまた古本屋でみつけました。
以前『宇宙人展』ってのに出した時に『木星人』を作りました。
木の人なんだけどね。
植物も歩いたら楽しいだろうなぁといつも思うんだよねぇ…
ルドルフとイッパイアッテナ [本(児童書)]
斉藤 洋さんの『ルドルフとイッパイアッテナ』
ひょんなことから住んでいた街から、遠く離れた東京へ来てしまった黒ネコのルドルフ。
そこで出会ったイッパイアッテナに気に入られ、ノラネコとしての生き方を教わっていく。
ネコ達の目線で書かれた話。(だってルドルフが書いたらしいし)
イッパイアッテナの言葉はズシンとくるものがあるな。
ルドルフの喜びを仲間が自分のことのように喜び、興奮したりしてほんとにうれしそうだ。
そして最後のイッパイアッテナの危機とネコ達の友情、ルドルフの成長と決心にドキドキし
感動してしまった。
我が家の庭には、よくノラネコが寝そべっている。
一番よく見る白いネコは、かなりデカくてコワイ。
ヤクザのように目の辺りに傷があるし…目つきもスルドイ。
ウチの庭だけど、目線にやられて逃げ出すのは私の方だ。
トラネコだったらイッパイアッテナみたいだよなぁ〜って思う。
あいつも字の読み書き出来てたら…おおコワ!
ますます私の負けだな。
ネコ達を見ると、ルドルフやその仲間みたいなこと考えていたりするようでオモシロイ。
もし子供達に『あのネコは集まって何してるの?』とか聞かれたり、ネコを飼っている子が
いたら、この本がいいかも。
本には小学中級からとなっているが、読み聞かせだったらもうちょい小さい子から平気かな。
うう〜ん。砂場に文字が書いてあったら、もしかしてもしかするとネコ達かもしれない…。
あわわ…こりゃ油断できないなぁ。