星兎 [本(児童書)]
寮 美千子さんの『星兎』
少年ユーリと等身大のうさぎの物語。
この地上に来る前はどこにいたのか、そしてなんでこの姿なのか、わからないと言ううさぎ。
そしてうさぎが『星うさぎ』なのだと思い出した時、このままでいられないことを悟ってしまう。
児童書というよりも、大人の癒し本といえるかも。
特別変わった難しい単語を並べているわけではないのに、美しく澄んだ文章。
その澄んだ空気間が、よりせつなさを際立たせる。
誰もが皆、地上にいつ来て、いつ去らねばならないのかわからない。
来る前にはどこにいたのか、去ったらどこにいくのか…
自分が自分だけのものだとしても、自分では決められないことがある。
そして去っていく者を見送るのは、とてもせつない。
なんの変哲もない王冠が宝物になるように、いくつかの小さな思い出を抱えて空を見上げる。
ぎゅうっと抱きしめる時間をもらえてよかったとうさぎは言う。
もしも私も去らなければならない時が来たなら、大切な人をぎゅうってして去りたい。
そんな時間がもらえるといいな。
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