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始祖鳥記 [本(時代小説)]


始祖鳥記 (小学館文庫)


飯嶋和一さんの『始祖鳥記』

安定した不自由のない生活が、幸吉にとっては窮屈でしかたない。
常に外へ外へと思う気持ちはやがて、大空を飛びたいという願望へ。
幸吉は、ただ単に空を飛びたかっただけ。
でもその行動は、悪政批判と見られ捕まってしまう。

幸吉の「空を飛ぶ」行為は、すべてを失うだけ。
でも飛ばずにはいられない。
その単純な思いとは別に、人々は幸吉の行動に希望を感じ、立ち上がる勇気へと変えて
いく。
幕府の悪政に対抗していこうとする伊兵衛や源太郎。
己の利益のためではなく、皆で立ち向かうために動く姿に感動する。
綿密な時代考証が重さと深さを、登場人物の行動が前向きな軽さを感じさせる。

世の為に向かっていく男達と個人的な思いで空を飛びたい男。
どちらもすがすがしく、かっこいい。

面白かった。
でもちょっと難しい漢字や言葉を使い過ぎな気も…。
そう歴史や時代背景にたいして強くない私には…流して読むには少し戸惑う。
歴史物に慣れてない人は、おおよそをつかんで最後まで読み、細かい所や時代背景を
また読み直していくとわかりやすいかも。

純粋さって、時に周りに迷惑かけたりしちゃうけど、強い。
幸吉はその後どうしたんだろう?
世界のどこかで飛んでいたんだろうか…?
名前を変えて、伝説になってそう。
結末があっさりしてたので、もう少しだけ幸吉を追ってほしかった気がする。

前向きで、大きな気持ちになれる本。




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憑神 [本(時代小説)]


憑神

浅田次郎さんの『憑神』
映画を見に…と思っていたけど、行けそうにないなぁと思って
本を読んでみる。

文武に秀でているのに、入婿にいった先では追い出され、出世の道もなく
自分の不遇を嘆いていた彦四郎。
さらに『三巡稲荷』に手を合わせてしまう。
貧乏神、疫病神、死神、三つを巡らないと終わらない三巡。

落語のようなテンポでポンポン進んで行く。
神様や登場人物も愛らしく、おもしろい。
ただ『感涙必至』って帯や紹介文はちょっと…なぁ。
設定はすごくおもしろいし読みやすい。
けどちょっと浅いような感じも…しなくもない(なんとなく)

彦四郎が『限りある命が虚しいのではない。限りある命ゆえに輝かしいのだ』と言う。
死神に憑かれてからは、このままでは死ねない、なんとか自分の命を輝かせたいと願い
自分の信念のままに進んだ彦四郎がかっこいい。
憑神も考えようによっては福の神なのかも。
くすぶっていた彦四郎が自分の生き方をみつけられたし…なんだかんだ言って彦四郎を
助けちゃってたしねぇ…。

幕末が舞台な話だけど、現代も人の人生はつらいことがあるのがあたりまえ。
それを嘆くのではなくて、そこからどう生きるかが大事なんだろうなぁ。

でもやっぱり、この三巡の神様にはできるだけ会いたくないけど(笑)


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十三歳の仲人 [本(時代小説)]


十三歳の仲人

平岩弓枝の御宿かわせみシリーズの『十三歳の仲人』
文庫本32冊目になったこのシリーズ。
今回の半分は、かわせみで女中をしているお石の縁談の話。

御宿かわせみは、大川端の小さな旅籠『かわせみ』に関わる人々が、様々に事件に
巻き込まれる人情捕物シリーズ。
シリーズ前半は東吾とるいの忍ぶ恋や周りの友人達の恋など、捕物だけでなく登場人物
の関係にもハラハラさせられる。

ここ数冊は、東吾さんとおるいさんももうすっかり落ち着いてしまってなんとなく
寂しく、子供達の成長ぐらいが楽しみになってきてしまった感じがちょっとあった
のだけど…今回のお石の話は、久々どうなるのかなぁと気を揉んで楽しんだ。

お石は御宿かわせみ25の『大力お石』で初めて登場する。
山出しの猿公などと呼ばれたお石も十八歳。すっかりきれいになり女中頭のお吉の
片腕として良く働く。
そのお石の縁談に関わっていくことになる大工の棟梁の小源太。
小源太は御宿かわせみ12の中で、父親と取っ組み合いの喧嘩をしながらもお互いを
思い合う大工の親子の話『息子』で登場する。

小源太には麻太郎だけでなく、読んでるこっちまではっぱかけたくなる。
でも最後にはお石が幸せになれてよかった、よかった。
御宿かわせみシリーズで祝言の話たぐいはホロッと泣かさせる。
それだけ登場人物に思い入れがあるってことかな。

平岩弓枝さんの本の中には爽やか系いい男がいっぱい出てくるし、御宿かわせみは
季節の花や行事などが書かれていて、女の人にもおすすめ。
捕物だから人の生死がかかわってくるけど、全体的にはおだやかな空気が流れている
ので、あまり力まないで読める。


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御書物同心日記 [本(時代小説)]


御書物同心日記

出久根達郎さんの『御書物同心日記』
御書物方同心なんてあったのね。
天下の稀本珍本が集められた将軍家の御文庫を管理する役職らしい。

文庫本の裏の本の紹介文を見たら、すごい事件が起こりそうな感じに思えたけど…
そういう目で初めは見てしまったので、ちょっと肩すかしくらったような気がしてしまった。
でも、1冊目に慣れて『続 御書物同心日記』『御書物同心日記(虫姫)』と読み進めてみたら
おもしろかった。

御書物方同心だから、人の生死に関わるような危ない事件に巻き込まれることはない。
でも本には本の事件がある。
主人公の丈太郎は根っからの本好き。そこを見込まれて御書物方同心の家に養子となる。
丈太郎の勤める紅葉山御文庫での出来事、丈太郎と仲の良い町の古本屋での出来事。
1冊の本に右往左往するのがおもしろい。
それに本に対するマニアっぷりがいい。お役所内での本の管理の仕方や修繕の仕方。
古本屋のつきあい、商売法。
丈太郎が本と聞けばすぐワクワクしちゃって、首をつっこむのも楽しい。
それに、丈太郎とつきあいのある面々は人情があって温かい。

捕り物とか、主人公が人生の荒波にさらされるみたいなドラマチックな話ではないけど
チラチラとクスッとするとこがあったりして、私的には好きかも。
古本屋めぐりとか好きな人におすすめ。
私は本のマニアではないけど、丈太郎の読む事も好きだが本に触れているのが好きって
気持ちはなんとなくわかる。書物の修理いいなぁ。

ところで3冊目の『鷽替』の話の中で柴平が聞いた、[鶯]の字はなんで鳥の上に火が2つ
なんだろう?答え出てきたっけ?ちょっと気になる…


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しゃばけ [本(時代小説)]


しゃばけ

畠中 恵さんの『しゃばけ』。
時代小説?なのかはわからないけど、江戸ファンタジーって感じ。

江戸の大店の一人息子の若だんな、一太郎が主人公。
両親は大福餅に砂糖をてんこ盛りにして、その上から黒蜜をかけたぐらい息子に大甘。
そして一太郎そばにいつもいる手代の兄や達は、過保護も過保護、周りがどうあれ
若だんなの無事が第一。
金もある、周りは皆過保護。そんな環境で極道物に育ちそうなものだが、主人公は超病弱。

手代は実は『犬神』『白沢』という妖。一太郎の身を守るためにつけられた妖。
一太郎は妖を見る事ができ、鳴家(やなり)という小鬼やら付喪神やらが常にそばにいる。
寝込んでばかりの彼の遊び相手であり、いろいろ調べてきてくれる手足。

病弱でもリッパな江戸っ子の若だんなは、皆に守られているのを良しとはしない。
せっせと抜け出し、事件に巻き込まれては…寝込む。

日本人は昔からいろんなものに神が宿ると信じてきた。
それに神様にもいいもの悪いものがいたり、なんだか人間くさっかったり。
妖怪も神様も身近なものとして一緒に暮らしてきた。
この『しゃばけ』シリーズも、そんな日本人の考え方のように妖怪や神様が愛らしく
身近なものとして書かれている。

この『しゃばけ』の後『ぬしさまへ』『ねこのばば』と文庫本は出ている。
『ぬしさまへ』『ねこのばば』は短篇のせいか?おもしろさは『しゃばけ』が一番かなぁ。
でも『しゃばけ』でキャラクターが気に入ったら、読んでみると楽しい。
(仁吉や佐助の過去なんかも出てきます)
江戸の粋な軽さがあるので、気負うことなく読める本。
ただ、現代とは違う時代の時間や長さなどが出てくるので、後で調べたくなるかも。

読んだ後、思わずウチの玄関に置いてある墨壺(すみつぼ)見ちゃった。
それにしても…やっぱり鳴家、かわいいなぁ♪


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しずり雪 [本(時代小説)]


しずり雪

安住洋子さんの『しずり雪』。
時代小説で買う作家さんはわりと決まってて、読んだことのない
作家さんの本を買うのは久しぶりだ。
短篇を集めた本。
それぞれ異なった話だが、全部に岡っ引きの友五郎が出てくるので同じ時代の
同じ空気を吸っている人々の話だとわかる。
自分の定めに向き合い苦しみながらも誠実に生きようとし、周囲の人々もその姿を
を心配しながらも温かくささえていく。

読んだ後、切なくてやさしい気持ちにさせてくれる本だった。
ちょっと若い夫婦の思いやる感じが甘くこそばゆい。
友五郎がからんくるおかげで、捕り物のおもしろさが加わるので少しこの甘さも
まぁ、いっかと思う。
人が温かく書かれていていい。

昨日、買った本屋を出てすぐ読みたくなり、公園で読みはじめてしまった。
集中してしまって、日陰のベンチだったので体がヒエヒエに…
うう…風邪ひいたかなぁ?
今日は『はちみつれもん生姜くず湯』を作って飲みながら、最後まで読みました。


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